狼上司の不条理な求愛 -Get addicted to my love-
ヒイイイイッ……
私は思わず目を閉じた。


「大神さんの……大神さんの…」
「え、何?」


「バカ~~~~~~‼‼」
「はぐぁっ‼」

佐村サンは、彼の背中を思いっきり踏みつけると、嵐の如く走り去った。

トドメを刺され、ヒクヒクと痙攣する彼を置き去りに。

……ナムアミダブツ。



幸いにも、
佐村さんが棚を立て直してくれたお陰で、私達はそこから脱出することが出来た。


「あの、ケガとか…大丈夫ですか?」
「ああ」

大神さんは何事も無かったようにスーツのホコリを払うと、早足で前をゆく。

「ホントかなあ?」
「ホントだって。ほら休憩が終わる、早く戻るぞ」


「………エイ」
トタトタと小走りで追い付き、ベシッと背中を叩いてみる。

「いっ…っ、な、何をする!」
「ほらぁ、やっぱり痛いんじゃないですかぁ」

「……ウルセーよ…イタクナイ」



その夜の彼の佐村さんとのデートは勿論キャンセル。
彼が共に過ごすお相手が、柔らかいオネエサンから、厳つい整体士に変わったことは言うまでもないが。

ナゼだろう、
私はちょっとだけ、気分が良かったり…した。

しかし。
ヒトの、しかも恩人の不幸を喜んではいけない。

だってこの日の出来事は、すぐに私にツラーい状況をもたらしたのだから___
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