雑踏の上のタマゴ

出逢い

今から10年前に前の会社に勤めているときに出会った、取引先の営業マンの彼は 営業スマイルの上手なアナウンサーみたいな男だった。 纏っているスーツはいつ会ってもピシッとアイロンが通っていてカッチリしたその姿はわりと高感度をもたれそうな男だった。 当然、同棲でもしている女もしくは妻がいて、やってもらっているのだろうと思える雰囲気。
しかしながら残念なことに、アタシにとっては無駄に顔がいいだけで、常にアタシをイライラさせることに事欠かない男だった。営業のクセに、段取りのへたくそな男で、
一緒に仕事をするたびにイライラさせてくれた。わざと?わざとなの?ドMなんだろうか?この男。アタシが仕事を貰う側なのに、いつもなにかにキレさせては、彼が謝まる構図が自然と出来上がるまでに、そう時間もかからなかった。
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