柚時雨



 今日は傘なんて

 持って来ていないのに。


 駅までの道のりは、結構ある。

 ずぶ濡れになるのは嫌だ。


 かと言って

 このまま学校に居るのも嫌だ。



 「はぁ……」



 俺は肩を下ろして

 大きなため息を吐いた。

 誰も居なくなった廊下に

 息の音が響く。


 未だに弱まらない雨を横目に

 俺は下駄箱へと向かった。






 すると、俺の下駄箱の前に

 小さな後ろ姿が見えた。





 …………里奈だ。




 「里奈?何してんの?」


 「あっ、奏ちゃん」



 里奈の背中に声を掛けると

 すぐに振り向かれた。




< 29 / 40 >

この作品をシェア

pagetop