柚時雨



 「なんで残ってんの?」


 俺がスニーカーを手に持ちながら

 里奈を避けて歩くと

 里奈は俺の後ろを追って来た。




 「雨、降ってたから」



 里奈はただそう言うと

 透明なビニール傘を見せた。


 そして、外に出ると

 その1つの傘を勢いよく開く。

 俺をチラッと見た里奈は

 ちょっと笑ってすぐに目をそらした。



 「奏ちゃん、入りなよ」


 「あー、ありがと」


 傘を持つ腕を高く上げた里奈は

 俺を傘の中に入れた。



 「いいよ。俺が持つ」


 「あっありがとう…」



 里奈の手から傘の柄を取り

 今度は俺が傘をさす。



 こんなこと、いつものことだ。



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