柚時雨






 俺の愛しい人は


 雨が大好きだ。




 俺の愛しい人は


 柚が大好きだ。




 俺の愛しい人は


 傘が大好きだ。







 大雨で違う姿を見せる公園で

 愛しい人の肩を

 小さく震える体を包み込む。




 ふわりと香ったのは



 雨の独特な匂いと


 爽やかな柚の匂い。







 秋の終わりに降る大雨は


 次第に弱くなり

 しっとりとした、小雨に変わる。







 「こういう秋の雨ってね
  時雨って言うんだよ」







 ゆい子が微笑む。



 俺の隣で、濡れた体をすくめる。






 ふうーっと優しく息を吹き込むと


 丸いしゃぼん玉が



 時雨の降る空に流れた。








 〈完〉




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