したたかな彼女

6時50分くらいに里花は来た。 彼女はいつも時間に厳しい。 早く行動しないと気が治まらないらしい。


「早く着いちゃった★」


里花はいつも笑顔でいってくる。 それが口癖だ。
嫌な事があっても、彼女の顔を見れば自然と笑顔になる。 それとも志保自身がそういう体質なのだろうか。
車に乗り込むと里花はすぐに尋ねてきた。


「今日どうだったの?」


「うん・・・」


志保はまりえのことを言うのをためらった。 とっさに頭によぎったのは、自分が裏切り者に感じたこと。
里花を信用していないわけじゃない。 ただ、嫉妬に腹がたつ自分が恥ずかしい。 “どうしようもない悩み”にすぎないのだ。
でももう限界だった。 車が走りだすと同時に、志保は今までのまりえの行動を里花に話した。


「まりえちゃんがさ・・・」


志保は小さな声で喋った。 彼女が話し終えるまで、里花は黙って聞いていた。


「・・・そんなことがあったの」


「うん・・・」


「全然知らなかった。 だって、志保はなにも言わないんだもん」


「だって、人の気持ちなんてどうしようもないじゃない」


「う~ん・・・」


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