カワイイ子猫のつくり方
午後になると、千代は早々に夕食の準備へと取り掛かり始めた。


「今日は、このお家のご主人さまがお帰りになるのよ。久し振りの我が家ですもの。今夜のお食事はうんと腕を振るわないとね。ミコちゃん、少しの間大人しくしていてね」

千代は張り切りながらウインクして言った。

「みゃー」

実琴は返事を返すと、千代の邪魔にならない場所で暫くその様子を眺めていることにした。


実を言うと、今日帰ってくるという朝霧の父親に会うのをちょっぴり楽しみにしていたりする実琴だった。

(あの朝霧のお父さんだもん。色々な意味で興味津々だよ)

性格は別としても、きっと美形に違いないと勝手な期待をしてしまう。

(でも帰ってくるのが『久し振り』だなんて…。何処か遠くで仕事をしていたりするのかな?)

やはり、これ程大きな家に住んでいる以上は会社の経営者か何かだったりするのだろうか。

何にしても、きっと多忙な人に違いない。

(でも、何だか千代さん嬉しそう…)

きっと朝霧の父親も千代にとっては本当の家族のような存在なのだろう。


せっせと野菜を刻んでいる、その小さな後ろ姿を見詰める。

千代は、いわゆる住み込みの家政婦というやつらしい。

この家に古くから務めているようで朝霧とはすっかり本物の祖母と孫のような間柄だ。

(でもきっと…千代さんは朝霧のお母さん代わりでもあるんだろうな)

実琴は切なくなって遠い目をした。
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