例えば星をつかめるとして
「松澤さん、この星たちに、君は何を願う?」
「……え?」
思ってもいないことを訊ねられて、言葉に詰まった。
星は、優しく明るく、こちらを照らしている。願いをかけたくなる気持ちも、少しだけわかるような気も、する。
けれど。
「……何も。あんな遠くの星なんて、何も叶えてくれないでしょ」
結局、私はそう答えた。願いをかけたくなるような星空ではあるけれど、叶えてくれるとは、どうしても思えなかった。
「うーん、じゃあ、流れ星が消えるまでに三回願いを言うと、叶うとも言うよね。例えば、今星が流れたとして、何を願う?」
「例えば、って……」
流星群の降る季節でもないから星なんて流れないだろう、と一蹴しかけたところで、星野が繋がっている手を優しく持ち上げる。
「ほら、今だって松澤さん、星を掴んでいるんだよ? 星だって、流れそうな気がしない?」
「……」
思わず、言葉が詰まった。
星を掴んでいる、確かにそうだ。そもそも宇宙から来た星野という存在自体が、お伽噺のようだもの。そう考えると、ありえないと一蹴するのは、あまりにも寂しい気がする。
「例えば、だよ。例えば、本当に星が流れて、叶えてくれるとしたら? 君は、何を願う?」
ずっと黙ったままの私に、それでも星野は、訊ねることをやめない。変わらず優しい視線をこちらに向けながら、私に問いかけていた。