イケメン伯爵の契約結婚事情


 翌朝、朝食を食べにやってきた夫に向かって、エミーリアは冷たく言い放った。


「いい加減、書庫に行くのくらい許可を頂けないかしら」

「ダメだ。しばらくは部屋にこもっていろと言ったろう。いいな、今日も出るなよ」

「でもこれじゃあ精神の方がやられちゃうわよ」

「もう少しだけ我慢しろ。叔父上と顔を合わせるようなところには出るな」


そう言って、フリードは取りつく島もなく部屋を出て行ってしまう。

食事中も妙に無口で、話をしている時間はあまりなく、掴んだヒントは何なのかということはもちろん、キスのことも問いただすことなどできなかった。

メラニーが倒れた日以降、フリードは妙に過保護になった。
トマスが傍にいても外出はダメで、自分が付き添う時だけいいという。

しかし、フリードは忙しい身の上だ。結局、エミーリアは部屋に置き去りにされる日々を過ごすことになり、退屈極まりないのだ。


「すみません、奥様。私のせいですね」


続き間のメラニーを見舞いがてら愚痴をこぼしていると、メラニーが落ち込んだ様子を見せる。
メラニーも順調に回復し、昨日あたりから上半身を起こしていられるようになっていた。


「そんなことないわ。フリードが過保護なのよ。メラニーはそんなこと気にしないで元気になってちょうだい」

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