イケメン伯爵の契約結婚事情
3.当主と叔父

 中に入ると、いい香りがエミーリアたちを包んだ。
エスコートしてくれるフリードに従って、エミーリアは天井が高く取られたエントランスを見渡した。


「これ、なんの匂い?」

「ああ。花の香りだろう」


入口付近の花台には、白の大ぶりのラッパ状の花が他の草花とともに飾られている。よく見れば、階段の登り口、廊下にもだ。
ベルンシュタイン家では、ここまで花は飾らない。それに、こんなに香りの強い花も見たことがなかった。


「綺麗ね。……初めて見たわ」

「これが特産品となるのも頷けるだろう?」

「ええ」


答えたと同時、靴音がホールに響く。


「お帰り、フリード。遅かったな」


低い声とともに、そこには側近二名を連れた男が現れた。
背はフリードと同じくらい。しかし歳は離れているだろう。まだ少年の色を残すフリードに比べて、こちらは完全に“大人の男”だ。

髪の色はふたりとも似ていて一見親子か兄弟かと思えるくらいだが、ダークブラウンの細目のせいか彼の方が全体的に冷淡な印象がある。


「これは叔父上。紹介します。我が妻、エミーリアです。エミーリア、彼はアルベルト。俺の叔父にあたり、現在は補佐役という立場におられる」

「ああ。こちらが噂のエミーリア嬢か」


アルベルトはブーツの足音を響かせ、エミーリアに近づいた。品定めをするような視線に、エミーリアは居心地が悪くなる。伸ばされた手につられるかたちで、儀礼的に握手をした。
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