もう一度君に会えたなら
「いろいろ聞いてしまってごめんなさい。でも、川本さんとは初対面じゃないですよ」

 一度だけすれ違ったことがあった。それに彼に会計をしてもらった。だから、こうして会うのは三度目だ。三度という回数にわたしは首を傾げた。

 本当にそうなのだろうか。わたしはもっと前に彼に会ったことがある気がした。

「一度店に来たことがあったよな。いや、君が覚えてるかは分からないけど、その少し前に公園の近くですれ違ったかな」

 わたしは驚いて彼を見た。

「覚えています」

 自分でも驚くほど、声高に主張した。

 彼もわたしを見て目を見張った。だが、すぐに目を細めた。

「で、そろそろ本題に入ろうか。何かあるなら力になるけど。一人自分目当てに君がこの店を覗いていると勘違いしている奴がいて、悪いこと言わないからそういうことはやめたほうがいいよ」

 勘違いという言葉にドキッとした。
 他の人が好きだと思われてしまっては困る。彼にはなおさらだ。

「分かりました。誤解されたくないからやめておきます」
「じゃあ、これで解決かな。そいつもしばらくしたら勘違いだったと気づくだろうし、あまり悪くは思わないでやってほしいんだ」

「分かりました」
「じゃあな」

 彼はそう言うと、コンビニの裏手に回ろうとした。

「義純さん」

 わたしは思わず彼の名前を呼んだ。
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