もう一度君に会えたなら
 お母さんは目を細めた。

 わたしはその言葉に顔が赤くなった。

「川本さんが挫折するとは思わないの?」
「多分、あの子はしないわよ。あの目を見ていたらわかるから。お母さん、人を見る目だけは自信があるの。まあ、あの人の息子というのは気になるけれど、それは仕方のないことよね」

 お母さんが最初、川本さんに対して良いイメージを持っていたのもそういう理由からだろうか。

 わたしは短く息を吐いた。

「今まで自分の人生をまじめに考えたこともなかったんだ。でも、わたしももう少しだけまじめに考えてみる。川本さんがそんなに頑張っていて、わたしも何もしなかったら、わたしは川本さんに相応しい相手になれないと思うもの」

 わたしの言葉にお母さんは目を見張った。
 だが、すぐに笑顔になった。

「そうね。あなたが納得するようにしなさい」

 そう言葉を綴って。

 お母さんはベッドの上に荷物を置いた。

「そろそろご飯でも行きましょうか。義純君を誘ってね。今日は好きなものを食べていいわよ」
「何で名前で呼んでいるの?」
「川本君じゃ紛らわしいでしょう」

 
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