もう一度君に会えたなら
「そんなの嫌」
「メールを送ってみたら?」

 そう言われ携帯を渡されるが、わたしは身動きできなかった。彼に断らたらどうしようという不安と、彼のことを何も知らないという距離感がわたしをそうさせていたのだ。

 榮子は苦笑いを浮かべると、わたしの携帯を取り上げた。

「次の日曜日、用事ある?」
「ないよ」
「じゃ、目を瞑って。一分間」

 わたしは言われたとおりに目を瞑った。

「いいよ」

 目を開けると、携帯を渡された。

「今日中には来るんじゃないかな。返事」
「返事?」

 わたしは嫌な予感がして、携帯のメールボックスを確認する。するとそこにはわたしが送った覚えのないメールが表示されていたのだ。その文面は彼を次の日曜日にデートに誘う内容だった。

「榮子、これどういうこと?」
「わたしが誘ってあげたの。らちが明かないんだもん」

「そんなの送って断られたらどうしたらいいかわからない」
「そうしたらわたしが慰めてあげる。きっと二人はうまくいく気がするんだよね」

「根拠は?」
「わたしの勘」

< 24 / 177 >

この作品をシェア

pagetop