もう一度君に会えたなら
 その夢を見始めたのはほんの最近だ。ドラマで見たとか、本を読んだというわけでもない。最近あった大きな出来事というのは川本さんに会ったことだ。だが、それもやはり無関係なのだろう。

 いったい「わたし」は何を見せたいのだろう。

 チャイムが鳴り、英語の授業が始まった。そして、昨日提出だったプリントが一人ずつに返される。
 わたしの番が来て、教卓まで行くと、先生は笑みを浮かべた。

「最後の問題は難しいと思ったけど、よく解けたわね」

 わたしは会釈してプリントを受け取った。
 わたしの点数は八十八点。川本さんに教えてもらったところは、先生に言われたように、全問正解だった。

 どうやら、クラスで全問正解だったのはわたしだけのようだ。先生は個人名は出さないものの解説のときにちらりと触れていた。わたしがなかなかわからなかったのは焦っていたのもあるだろうが、問題の難易度も無関係ではなかったのだろう。


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