もう一度君に会えたなら
 わたしは携帯を取りだすと、大姫と検索をしてみた。このまま学費のことを考えても気が滅入るだけだと分かっていたためだ。するとすぐに検索結果が表示される。そして、最初のページを見て、眉をしかめた。どうやら彼女は源頼朝の娘のようだ。そして、そこには偶然にも義高という名前の少年のことが記されていた。義高というのは木曽義仲の息子で、十一歳で大姫の婚約者として鎌倉に来たらしい。

「鎌倉って」

 わたしは苦笑した。

 中学のとき歴史の授業で出てきた地名だが、イメージ的には関東にある遠い地だ。

 読み進めていくと心臓をわしづかみにされるようなことが書かれていた。義高は頼朝の部下によって殺され、大姫はそのことを気に病んだのか、他の理由があったのかは分からないが二十歳くらいで亡くなったという。ただ、鎌倉時代は平均寿命がいまよりもずっと短かったし、一概にそのことについてはどうこう言えないのかもしれないが。

 わたしは名前も知らない人の夢を見ていたということなのだろうか。何かでちらりと見て記憶が残っていたというのだろうか。

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