もう一度君に会えたなら

「でも、これは言ったらいけない話なの。だから、誰にも言わないで」

 わたしは慌ててそう口添えした。
 お母様は顔をゆがめた。

「そう義高殿が言っていたの?」
「そうじゃないの」
「誰にも言わないから、その花を見せてほしいの」

 お母様にそう言われ、わたしは頷いた。
 昼間見たあの花のところにお母様を案内した。
 もう日は傾きかけていたが、桃色の花は存在感を放ち続けていた。
 まるで自分の居場所を教えてくれるかのように。
 お母様はその花を見て、顔をゆがめた。

「姫は義高殿のことが好き?」
「大好き」

 わたしは目を細めた。
 それは偽りのない本心だった。

「義高殿が来て、よく笑うようになったわね。驚くくらいに」
「義高様はいろいろなことを知っているの。だから、すごく楽しいの。いつか義高様のふるさとにわたしも行ってみたい。もっと大きくなったら行けるでしょう」

 お母様の目が太陽の光に反射され、煌めいていた。

「そうね。いつか行けるといいわね」

 太陽の淡い光に絞り出されるかのように、お母様はそう呻いていた。
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