HANABI
もうお気づきだろう。
そう、あたしと粟生は所謂
“先生と生徒”なのだ。
粟生はあたしの担任の先生で
あたしは粟生の担当クラスの生徒。
でも、別に何も気にする事なんてない。
だって、好きなんだもん。
先生だとか
世間体とか、道徳だとか。
そんなの、気にする理由に値しない。
好きなもんは好き。
仕方ないじゃん。
「お前はホンマにアホじゃな。」
「何でよーっ!」
ぶぅ、と頬を膨らませたあたしを眼鏡の奥に光る鋭い瞳が捉える。
「お前が気にせんでも、俺は気にしようる。」
「…何で?」
聞き返したあたしに、ボールペンを机に置いた粟生は言った。
「里見は俺の生徒で、俺はお前の先生じゃから。」