奏 〜Fantasia for piano〜

立ち上がった爽くんの胸に、星型のキラキラシールを貼ってあげると、とても嬉しそう。

ああ……素直で可愛いよね、子供って。

幼稚園の先生は肉体労働と言っていいほど体力を使うし、危険がないように常に気を張っていないといけない。

保護者との関係にも気を遣うし、結構大変な職業だ。


それでも毎日が楽しくて、充実している。

幼稚園の先生になってよかったと、子供の笑顔を見るたびにしみじみ思う。


「先生、みなさん、さようならー!」


十四時五十分、子供達は降園する。

三分の一は園バスで、残りの子は保護者のお迎えと、預かり保育のアップルクラブ。

園バスの子供達を見送り、玄関で保護者のお迎え対応をしてからうさぎ組に戻ると、胸に星型シールを貼った爽くんが私のエプロンに飛びついてきた。


「綾先生、遊んで〜」

「あれ、爽くんはアップルクラブでしょ?
アップルクラブの先生、呼びに来なかった?」

「来たよ。でも綾先生と遊ぶって言ったら、後でおいでって」


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