君の幸せな歌を
冬和のいる世界は、例え真実じゃなかったとしてもこういうことがあるのはわかってたんだけどね。1度もなかったから、油断してた。
「冬和……っ、今ニュースで冬和のことやってた」
「うん。ごめん。これから事務所も否定するし、俺も否定するから。本当はもっと大勢で食事だったんだよ。なのに偶然2人でいるとこを撮られて、さも2人きりだったみたいに……それでもあんな写真、ごめんね」
「それは冬和、悪くないじゃん。謝ることないよ」
落ちてくる涙を、近くにあったティッシュをとって拭う。電話の向こうの冬和が優しく微笑んでいるのが見なくてもわかった。
「それでも、月歌のこと不安にさせたから。今日、無理しなくていいからね。オードブル買っていけるし……絶対帰るから」
「大丈夫だよ。心配しないでよ。そっちこそ、歌詞間違えたりしないでよね。本番じゃないからって気を抜かないでね」
「うん。僕は全然。じゃあ、またあとでね」
うなずいてから電話を切る。ちゃんと違うって言ってくれたのに、あたしはどうしてかもやもやしたままだった。