君の幸せな歌を


メジャーデビューするときも、こんな感じだったかも。冬和は女の子たちから圧倒的な人気で、不安だった。

あの女優さんは、綺麗で、人気もあって。冬和の隣に並んでも申し分ないだろう。もしかすると、ファンの子も納得して応援したくなるかもしれない。


それに比べてあたしは何があるんだろう。って、思ってしまった。嫉妬してるのかな。うん、そうなのかも。


あの女優さんくらい綺麗だったらあたしも、もっと自分に自信が持てたんじゃないかなあ。同い年なのに華やかさが全然違う。


だって、あたしは8年付き合ってただけだ。飽きられてもおかしくない。もし冬和が女優さんを選んだとしても、仕方ないことだ。

あたしは何も持ってないんだもの。25歳になって、仕事も何となくで、特別なことは何も持ってない。あるのは冬和を想う気持ちだけ。


「……とりあえず、準備、しなくちゃ」


そう自分に言い聞かせて、奮い立たせる。

急に怖くなってしまった。彼女なんて存在は、案外ちっぽけなものだ。


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