復讐の女神

ゆりの企み

ゆりと片山課長はゆりの家に向かって歩いていた。
ゆりが少し前を歩き、片山課長がそれに続いて歩いていた。
会話もなく、ただとぼとぼと。

片山課長の真意はどうだか分からなかったが
ゆりは内心苛立っていたため言葉を発する気になれなかった。
けど、ゆりはふと上を見上げるとこの都会の空でも
輝いている星を見つけて嬉しくなり思わず口を開いた。

「星、綺麗ですね!」

突然声をかけられて片山課長は一瞬何事か分からなかったが
彼女が空を見上げてるのを見て彼も一緒に空を見上げた。

「あぁ、そうだな。」

「なんか、宇宙って神秘的で偉大ですよね。」

「え?」

「地球って宇宙から見たらちっぽけな存在なのに
あーでもない、こーでもないと小さな世界で悩んで苦労してるなんてバカみたい」

突然のゆりの嘆きに片山課長は一瞬戸惑ったが
彼は揶揄することなく彼女の言葉を素直に受け止めた。

「あぁ、そうだな。宇宙から見た地球なんて砂粒のように小さくて取るに足らないものだろう。
その中であくせく働いてるなんてバカみたいだな」

同調と人生を卑下した言い方に思わずゆりは噴き出した。

「私たち、あくせく働いているのバカみたいですか?」

ゆりが笑いながら振り向きざまに言うと
片山課長は真剣な顔で空を見上げていたので思わずゆりは笑止した。

「例えどんなに小さな存在でも俺たちは生きている、生かされている。
だから、天の道理に従って生きるだけだ。」

「・・・・」

「俺は、その自然の摂理に反して、捻じ曲げようとしたから罰を受けたんだな」

そして、片山課長はゆっくりと顔を下ろすと
ゆりを見つめた。

目が合ってゆりは一瞬びっくりして思わず目を逸らした。

「家はまだか?」

「え?あ、その角曲がったらすぐそこです」

「そうか。」

そして、何事もなかったかのように
2人はまた歩き始めた。
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