黄昏の千日紅
去年の春。
当時私に先輩についての事を話した竜成さんは、一体どんな気持ちだったのだろう。
話したところで、この子も皆と同じように離れて行くのではないかと不安だったのではないか。
もしかしたら、先輩本人よりも父親の方が、胸が張り裂けそうになってしまう程、辛い思いをしてきたのかも分からない。
しかし、私が先輩から離れることは、私からは絶対にないと言い切った。
寧ろもっと近付きたい、寄り添いたいと、そう言った。
竜成さんの涙を、私が目にしたのは、その時が最初で最後だった。