黄昏の千日紅
私に身内と呼べる者は、祖母しか居なかった。
すぐに、遠方に住む祖母の家に移住することになった。
私は独りではない、孤独ではないのだ、と悟った時、酷く安堵したことを憶えている。
祖母に、両親について問うても口を堅く結び、決して語ってくれることはなかった。
何故、皆揃って私に隠すのか、当時はその意味が全く分からなかった。
しかし今思えば小学生だったあの頃、その全貌を知った所で、私の心はいとも簡単に崩壊したであろう。
その為の周りの配慮だったのかもしれないと、現在では感謝している。
私が全てを知ったのは、小学六年になった時だった。
両親は、養子である私を育てることに疲れてしまったと。
そして私の誕生日だったあの日、あの海で、二人は心中したと。