黄昏の千日紅





皮肉なことに、その後のことを私は全く覚えていない。



気付くと私は、病室のベッドの上に寝かされていたのだ。




「大丈夫」と言った優くんの言葉だけが、現在でも頭の中で偶に木霊する。





両親がどうなったのか、その時誰も私に教えてはくれなかった。



幾ら聞いても、誰も口を破ることはなかった。




優くんでさえも。








そして、優くんはそれを機に、私の前から忽然と姿を消した。



正確に言うなれば、梶ヶ谷の両親が離婚をし、再婚した母親に優くんがついて行ったというものだ。




私に言葉を残して。







” …にな…たら… ”


” か…ず… ”


” や…そ… よ ”








ああ。


まただ。




会話が出てこない。






優くんは、なんて言ったの。

……私は、なんて言ったの。






< 153 / 284 >

この作品をシェア

pagetop