黄昏の千日紅
皮肉なことに、その後のことを私は全く覚えていない。
気付くと私は、病室のベッドの上に寝かされていたのだ。
「大丈夫」と言った優くんの言葉だけが、現在でも頭の中で偶に木霊する。
両親がどうなったのか、その時誰も私に教えてはくれなかった。
幾ら聞いても、誰も口を破ることはなかった。
優くんでさえも。
そして、優くんはそれを機に、私の前から忽然と姿を消した。
正確に言うなれば、梶ヶ谷の両親が離婚をし、再婚した母親に優くんがついて行ったというものだ。
私に言葉を残して。
” …にな…たら… ”
” か…ず… ”
” や…そ… よ ”
ああ。
まただ。
会話が出てこない。
優くんは、なんて言ったの。
……私は、なんて言ったの。