黄昏の千日紅
肩につかないくらいの長さの、栗色をしたボブヘアの女。
内巻きに丁寧に巻かれており、染髪してあるにも拘らず、艶のある綺麗な髪だ。
白く細い手で、髪パックのアイスティーを屈んでから取り出すと、落ちてきた片方の髪の毛を耳にかける仕草に、思わず目を奪われる。
何故俺が一人の女なんかに目を奪われているのか、注目して見てしまっているのか、自分でも分からなかった。
一つ一つの動作に魅入ってしまうその女の姿は、周りの女と何かが違うような。そんな気がした。
そして、彼女がちらりとこちらの群れを一瞥すると、不意に視線が絡み合い、俺の鼓動が勢い良く波を打つ。
センターで分けられた前髪から覗く瞳は、少し吊り上がっており、化粧は少し施してある程度のナチュラルメイクだ。
表情はどことなく冷たい。他の女子達と比べてしまうと、かなり落ち着きが感じられる。
特別美人という訳ではないが、見惚れてしまう魅力が彼女にはある。
その日から、何の変哲のないつまらない日常が、絵の具で色を載せていくかのように少しずつ色付いていく。