黄昏の千日紅
俺は、自然と上がりそうになる口角を無理矢理抑えて、窓側の端の席にゆっくりと腰を下ろす。
窓の外からサッカー部の声と、水泳部の水の音が聞こえてきた。
あまりにもこの空間が静か過ぎる所為なのであろうか、外の音がやけにしっかりと耳に入ってくる。
表紙を捲り、読み始めると何年か前に読んだ時とは全く異なった解釈が出来る。
当時は些か難しいと感じていた言葉すらも、すらすらと頭の中で勝手に変換される。
映像が自分の頭で勝手に浮かび上がり、まるで映画を見ているような感覚。
当時は全然面白さを感じられなかったにも拘らず、今となってはこんなにも興味深さを感じられるだなんて。
変わっていく自分自身さえも面白いと心の内で思いつつ、そんなことを考える自分に対して笑った。
暫くは外の音が気になっていたが、その本の世界観にいつの間にか引き込まれ、夕焼けの茜色が室内に流れ込んでいた。