この夏の贈りもの
☆☆☆

和と2人で古い校舎を歩く。


それはとても不思議な気分だった。


なんだかフワフワと雲の上を歩いているような感じがする。


現実味がないのだ。


歩くたびにキシム廊下。


蜘蛛の巣が張った窓。


教室のカーテンにはカメムシの匂いが染みついている。


歩くたびに自分が通う高校との違いが浮き彫りになっていく。


「貴重な校舎だね」


周囲を見回してあたしはそう言った。


「あぁ。そうだな」


和はぎこちなく返事をする。


和もあたしも、居心地の悪さは変わらないようだ。
< 136 / 218 >

この作品をシェア

pagetop