この夏の贈りもの
男子たちからイジメを受けて来たあたしは男は顔ではないと、重々承知していたはずだった。


そんなあたしでもドキドキしてしまうくらい、彼はかっこよかった。


「誰ですか?」


このクソ暑い中学ランを着て涼しい顔で立っている住田唯人と言う男にそう聞いた。


「お仕事の依頼に来ました」


「仕事……?」


あたしはお父さんとおじいちゃんの顔を思い出していた。


この家に直接依頼に来る人はたいていどちらかの知り合いだ。


「あいにく、父も祖父も別件で家におりませんが」


仕事のお客さんということで、一応言葉使いに気を付けてそう返事をした。


「いえ、俺は武田チホさんに仕事の依頼があって来たんです」


「あたしに……?」


武田チホとは間違いなくあたしの名前だ。


でも、あたしはまだ高校生で、家業に関してはまだまだ見習いだ。


名前だって知られていないはずなのに、あたしを訪ねてくるなんてどういうことだろう?
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