花一刻、〜新撰組〜
「何もされなかったか。」
土方さんが言った。
「大丈夫でありんすよ。」
あたしの声には喜びと切なさが混じっていたと思う。
なんで思った事がこんなにも言えないの。
「良かった。」
土方さんは少しだけ微笑むと、
「あっ…。」
あたしをぎゅっと抱きしめた。
どくん…。
心臓が飛び跳ねたみたいだった。
何を言ったらいいか分からない、
ただ、怖くて緊張した瞬間から、だんだん
安心感が湧き出てきて…あたしも彼の背中に
手を回した。
だんだん雲が遠くの空へ流れて、
太陽が顔を出した。
「土方様、なぜここへ。」
「特に理由は無いよ。」
土方さんは、ゆっくりとあたしを立たせてくれた。
すると急に真面目な顔になって…。
「この間、総司とはどこまでいったんだ。」
え。この間って宴会の事だよね。
「月を見ていただけでありんす。」
そしたら土方さんはほっと息をはいて、
「良かった。」
と、また言った。