ダイエットの神様
 帰り道、紗枝はこれからどうす
ればいいのか考えると不安になっ
た。
(働けるのかな?)
 紗枝の目に色々な店が映るが、
すぐに雇ってもらえそうには思え
なかった。それに働きたい仕事に
も思えない。
 しばらく歩くと、人通りの少な
い道端に、たこ焼きを販売してい
る移動販売車が止まっていた。
 紗枝は怒ったせいか、お腹がす
いていることに気づいた。
 たこ焼きを買おうと近づくと、
紗枝と同い年に見える青年が、雑
誌を読みながら店番をしていた。
「あの、たこ焼き買えますか?」
 紗枝は恐る恐る聞いてみた。
すると、青年は雑誌のきりのいい
ところまで読んで、顔を上げた。
「はい」
 青年は無愛想だったけど、たこ
焼きを手際よく作り、
「今すぐ食べる?」
(あんた作れるの!)
「は、はい」
 たこ焼きをトレーにササッとの
せて、青のりをかけて紗枝に手渡
した。
 紗枝は慌てて小銭を取り出し、
青年に渡した。    
 青年はその小銭を受け取って、
また雑誌を読み始めた。
(なによ。そんなんで客が来るわ
けないじゃん)
 紗枝は怒りを押さえて、その場
で1つ食べてみた。
(おいしい!)
 一瞬で怒りがどこかに行ってし
まった。それと同時に、退学にさ
れた自分が情けなくなってきた。
(お母さんは、なんて言うだろ
う?)
 紗枝は気が緩み、突然、泣きは
じめた。    
 泣き声に気づいた青年が紗枝を
見ると目が合った。
 思わず紗枝は、
「まずい」と、気持ちとは反対の
ことを言ってしまった。   
 しまったと思った紗枝は、
「私のほうがもっとおいしいたこ
焼き作れます。雇ってください」
と、自分でもなんだか分らなく
なっていた。    
 紗枝はその場に日が暮れるまで
立ち尽くした。
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