雨を待ちわびて

「先生…我が儘って駄目なんでしょうか…」

「ん?実は、僕も、我が儘を言いたいと思っていたところだったんですよね」

「先生もですか?」

「はい」

「ん〜、例えば、チキンカレーと野菜カレーとか、カレーだけ少量で購入出来ないのでしょうか」

「それですよ。値段を半分くらいにして貰って、ハーフハーフみたいにして貰えないでしょうかね。
ちょっと、交渉してみましょう」

「あ、先生…」

思い立ったら迷いが無いんだ。先生も沢山ある種類から一つには絞り切れなかったみたい。
でも、どうなんだろう。
普通はこんな融通は出来ないよね。みんなに言われたらキリが無いもの。

あ、先生が手招きしている。
歩み寄ってみた。

「OKですよ。交渉成立です。今ならお客さんが少ないから出来ますって、ね?」

「はい。内緒です。念のため、お食事は、少し離れたテーブルでお願いできますか?
あと、カレーライスの食券を買って出して貰えば、お好きなのを入れますから言ってください」

「だって。守田さん」

「…いいんでしょうか、先生」

「いいんですよ、特別日ですから、特別です」


カレーライスの食券を出して、二人共、希望の種類を告げた。

「すぐ入れますね。お待ちください」

「有難うございます」

「すみません、有難うございます」

「どれも美味しいですよ?さあ、…どうぞ」

一皿にかけられるのかと思っていたら、お皿に分けて入れてあった。

それぞれトレーで受け取り、端の離れた席を選び座った。

「先生、美味しそうです」

「はい、早速、ご好意に甘えて、頂きましょう」

「はい、頂きます」

「頂きます」

「…美味しいです」

「うん。僕のも、美味しいですよ」

私は、チキン、野菜カレー。先生はシーフード、グリーンカレーだった。

「我が儘も駄目元で言ってみるものですね。守田さんの発案のお陰で有り付けました」

「食堂のお姉さんのお陰です。それと、先生が言ってくれたお陰です」

「そう。言ったのは僕です」

「はい、有難うございます」

「はい」

「フフ」

「アハハ。おっと、…目立たないようにしなくては、サービスがバレてしまいます。シーッですね」

「はい。シーッです。フフ」

「ハハ。…いけない。やはり、誰かと食べるのは楽しいものですね」

「はい」
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