雨を待ちわびて
「次回来られる時も、前もって連絡をしてくれますか?」
「はい」
「来週は午後だと都合が良いのですが…」
「はい、解りました。では、丁度、一週間後でいいでしょうか」
「えー、では、来週の今日」
「はい」
「解りました。承っておきます。駄目になった時だけ、連絡をしてください」
「はい、解りました。時間は?」
「午後なら何時でも大丈夫です」
「はい」
「来週は夜勤明けになる予定ですので」
「え?では、わざわざ、…出て来てくれる事になるのでは?」
「病院から部屋は近いんですよ。…何かあった時は直ぐに来られるように。
カウンセリングに来られる方は、僕の都合なんて一々気にしてはいけません。…うっかり夜勤明けだと言った僕も僕ですが、…いけませんね、つい。
ですから何も気にせずに。これは仕事ですから。
…大丈夫ですよ、睡眠は取って、きちんと休みますから」
「え?」
「僕の休む時間はあるのか、心配してくれたのでしょ?」
…また、読まれてしまった。でも普通、心配しますよね?
「…また、直ぐ夜勤になるのでは?」
「いいえ、翌日の、通常ですよ。だから余裕はあります、大丈夫」
「そうなんですね。…本当ですよね?」
「ん?本当ですよ。気にかけ過ぎです。心配なら、確かめに来ますか?」
「えっ?」
「…冗談ですよ。そんな事をしたら、守田さん、ずっと病院に居ないといけなくなります」
「あ、…はい。そうですね」
「食後、何か飲みますか?」
「あ、では、私が。先生は?珈琲ですか?」
「そうですね、珈琲にしましょう」
「では買って来ます。ミックスジュースのお礼です」
「では、遠慮しない事にしますね」
「はい。これ、返却しておきますね」
「有難うございます」
「いいえ」
両手に空いたお皿ののったトレーを持って行く。
こうして話している時は、普通に楽しそうなんだ。できれば一人で過ごさない方がいいだろうな。
何か、外に出て、…急がなくてもいいから、あまり負担の無い仕事が出来るといいかも知れない。
「はい、お待たせしました」
「有難うございます。遠慮無くご馳走になります」
「先生?」
「はい?」
「食堂のお姉さん、先生のファンなんですって」
「……それはそれは。…何とも…」
はっきり聞かされると、利用し辛くなったな。
「あの、それでは私そろそろ…」
「そうですか。では、出ましょうか。来週、待っています」
「はい、また来週、お願いします」
食堂を後にする。何となく視線を感じた。やはり…食堂のお姉さんだ。
…そうなるよな。人に話すと、余計意識が強くなる。
…僕はカレーのお礼も含め、笑顔を返して会釈をした。
特別な意識は困るんだ。