雨を待ちわびて

また同じ道程を反対から歩いた。
遊歩道を歩き、途中、また、休んだベンチに腰掛けた。
思えば、手は当たり前のように繋いでいる。私が何故って聞かないから?それとも、やはり、先生としての習慣?
全く違和感を感じさせない優しい握り方。


バス停迄送って貰って気が付いた。

「あ、先生…、花…」

「あぁっ。…忘れてましたね。またにしましょう。また、会った時に」

「はい」

「それまでは、俺がちゃんと育てますから。心配無く」

…今更だけど、先生の話し方、敬語と俺と言う代名詞が微妙に合わなくて変。
普段の僕と印象が違い過ぎ…。

…。

「先生…」

「はい」

「大変…」

「はい?」

「バスが無い」

「はい、…え゙!!」

「…ほら、見てください」

時刻表のこれから後が、真っ白…。

「平日なのに?もう無いなんて…」

どうして、…どうして?

「あ、はいはい。ここは病院前〜」

先生?突然、転職ですか?車掌さんですか?

「今日は木曜です」

「はい」

「病院は?」

「午後、休診…」

「はい。ここは、ちょっと市街地から離れています。元々バスの本数も少ない。
午後も一定の時間迄はあるけど、病院から帰る人が居なくなる時間帯になると…無くなる」

あー、私が帰る頃は、まだ後の便もあった。
だから、気にならなかった。ご飯食べちゃったから…。

「ゔ、タクシー、呼びます…」

「送りますよ」

「え、でも」

「刑事さんに連絡してください。俺はまだ、誤解で殺されたく無いですから」

「すみません、有難うございます。…連絡しておきます」

「…宜しく。では、また、俺の部屋まで戻りましょう」

「はい」
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