雨を待ちわびて

雨は上がっていた。

「見て解ったと思うけど、俺の部屋には何も無い。
だからすぐ居なくなるとしても必要な物は買おう。一緒に居て買い辛い物があったら、カゴを別にして。
とにかく、守田さんの日常で必要な物は買おう」

「はい。あ、私、飛び出して来ても、お金とか、大事な物は全部持ってますから。このバッグに、いつもずっと纏めて入れていましたから」

…そう、…いつでも柳の用意した部屋を出たいと思った時、困らないようにしていたから。

「また居ない人の事、考えてませんか?…駄目ですよ。
あ、飲み物はこっちに入れてください、重いですから。ところで、晩御飯はどうします?
一旦帰って出掛けてもいいですが。俺は普段から自炊出来るほど材料は揃えてないんで」

「ご飯は?…お米、そもそも炊飯器は?」

「…無いかな、炊飯器」

頭を掻いている。

「では、お弁当ではなく、お惣菜を買って、炒飯とか、ピラフとかを買いましょう。久遠さん、お皿は?無いです?」

「一人分が辛うじて、かな」

「解りました。じゃあ、紙皿を…。電子レンジは…、ありましたよね?」

「ある。ハハハ、必需品だ」

「…はい。後は…、私の必需品で終わりかな」


「よし、会計しよう」

「はい。あれ?眼鏡、いつの間に?」

「ん?守田さんがお風呂に入っている時にコンタクトにしたよ?」

「気が付かなかった…、してないって事に見慣れてしまったからでしょうか」

「それはそれは、…。どっちが好きですか?」

「……久遠亨、という人かな、です」

「流石、上手い。害が無い答えです。悪く取れば、どうでもいいという事です」

「違いますよ。どちらも捨て難いという事です。選べないという事です」

「最初からそう言ってくれたら、御の字だったのに」

…。

「袋、重くない?もう一つ、持とうか?」

空いた手は繋がれていた。

「このくらいは普通に持って当たり前です。有難うございます。大丈夫です」

…たった一日だ。たった、一日にも満たない時間で、片霧さんと出来なかった事を久遠さんと簡単にしてしまった。
そんな事を考えたら、何だか解らないけど涙が滲んだ。
解ってる。比較しては駄目だって事は解ってる。
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