ALONE
吉川は俺の言葉を聞くと



自身の罪の重さを理解し



その場に泣き崩れた。



こいつはまだ人の心を失ってはいない。



それより救えねぇのは…



俺は立ち上がり



車の後ろで頭を抱えて怯えきってる男のもとへ歩き始めた。



『おい変態野郎…』



俺は右足のつま先で美姫の親父の頭を小突いた。



奴は顔上げると涙や鼻水、脂汗で顔がグシャグシャになっていた。




見てらんねぇ…




『た、助けてくれ!!金か!?君は私から金を奪いにきたんだろう!?』





なんで…





『たのむ!土地もやる!ウチの会社の株もやる!だから…な!?助けてくれ!!』




なんで…




なんでお前みたいな奴をアイツは…



頭に美姫との電話越しの会話がよぎる。






《でもね…お父さんを嫌いにはなれなかったの。》





…駄目みたいだ美姫。




俺は…



こいつに同情することは出来ない。



しかしせめてもの慈悲くらいはくれてやる。



俺は自分の携帯を取り出し


3桁の番号を静かに押し



受話器の向こう側の他人と


最低限の会話をした。
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