ロストマーブルズ
 次の日、トニーは一層キノの姿を探した。
 朝の通学で、キョロキョロしすぎて不審人物になっていた。

「ちょっとは落ち着けよ、トニー」

「これが落ち着いてられるか」

「でも、彼女にしてみたら気づかれたくないことなんじゃないのか。だったら知らないフリをしてやるのが一番だと思うんだけど」

「その前にちゃんとした友達になっておきたいんだよ。知り合いにハリウッド女優なんて滅多にないチャンスだぜ」

 下心丸出しのトニーにジョーイは呆れる。

 しかし、この日もキノに会うことはなかった。
 ちゃんと学校に行っているのかさえわからない。


 そして放課後、トニーはまた英会話ボランティアへ向かい、ジョーイは無理やり引っ張られていきそうになるところを、寸前でかわして走って逃げた。

 何が楽しくて人の手伝いをしなくてはならない。
 ズボンのポケットに手を入れ、下校する生徒に紛れて、不満な顔つきでふてぶてしく歩いていた。

「あの、ジョーイさん」

 校門を出ようとしていたとき後ろから声を掛けられる。
 振り向けば、リルがいた。

 気を遣うのも話すのも億劫で、愛想がない顔を向けたが、リルの方がそれ以上の仏頂面だったように思えた。

 あれが人に声を掛ける顔かと思いつつ、自分もこれが人に声を掛けられて応える顔かといい勝負だった。

 さすがなんとなく同じような雰囲気を持つ自分達──。

「やあ、何か用か?」
「これ、どうぞ」

 リルは黄色い網にいくつも入ったビー玉をジョーイの目の前に差し出した。
 ジョーイは暫くぼーっとしていた。
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