ロストマーブルズ
「リル、離してくれ」

「あの人と何があったか知らないけど、なんだかとっても危険な感じがする。行かない方がいい」

 目を一瞬でも離せば、ギーは人ごみに溶け込み、すっかり姿を消してしまった。
 ジョーイは不完全燃焼になりながら、苛立ちを顔に表す。

「ジョーイさん、一体何に巻き込まれているの?」

 リルが不安な面持ちで問いかけるが、ジョーイは溜息出しながら首を横に振る。
 それを見つめるリルの目が寂しげだった。

「そうだ、さっきの質問だけど、なぜ俺が誰かと待ち合わせしているって訊いたんだ?」

「それは、その、ある人から聞いて」

「誰から?」

「全然わからない。下校中一人で歩いてたら、後ろから声を掛けられて、でも振り向かずにそのまま聞けって言われて。そしたらジョーイさんが夜桜祭りで何かに巻き込まれるから、もし友達だったら助けに行った方がいいって忠告された。私、それで心配になって、言われた通りに来てみたら、ほんとに危ないことになってたから怖かった」

「何だって? 一体誰がそんな忠告を君に」

「私も分からない。私が後ろを振り返ったとき、もうそこには誰も居なかった。だけど声は男だった」

 ジョーイは険しい顔をして黙り込む。

 何かが確実に自分の見知らぬところで動き、そして関係のないリルまで巻き込んでしまった。
 これもビー玉が転がった仕掛けなのだろうか。

「一体何が起こってるんだ」
 ジョーイは憤懣たる気持ちを必死に抑えて体を震わした。
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