ロストマーブルズ
「とにかく帰ろう」

 ジョーイが歩き出すと、リルもそれについていく。
 二人もまた人ごみの中に飲まれていった。

 その様子を溢れかえる人たちに紛れて見ていた者が二人いた。


「キノ、ほんとにこれでよかったのか」
「うん。今はこうするしかなかった」
「いつまでこんなこと続けるつもりだ。これ以上は危険だ。もう諦めろ」
「あともう少しだけ。もう少し私に時間を頂戴。ノア」

 ジョーイとリルの様子を憂いを帯びた目で、キノは遠くからもどかしげに見つめる。

 ノアと呼ばれた男はキノの行動に少し苛ついていた。
 溜息を一つ吐くことで、それを露骨に表すも、気を取り直す。

「しかし、あのFBIの男も無茶な賭けにでてきたな。まさか本当にジョーイに痛い思いをさせるとは思わなかった」

「私も同じように狙われているってことなのね」

「ああ、あの雑誌を故意にキノの目に付くところに置いて、ジョーイを誘い出すようにしたのも奴の作戦だろう。わざとジョーイを襲わせて、キノがどう動くか反応を見たかったんだろう。いいか、これからは自分の行動に気をつけるんだ」

「わかってる」

 キノの瞳は寂しさで虚しく、どんよりとしていた。
 眼鏡を外して、キノは目を擦ってしまった。

 ノアは優しくキノの頭に手を置いて、精一杯慰めていた。

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