ロストマーブルズ
 キノとジョーイが急激に接近したことで、不穏な影が忍び込んできた。

 そうとも知らずに、ジョーイはキノと近づけたことを、良い兆しに感じて喜んでいる。

「明日は午後から野球の試合か。カウンセリングが朝からだから、充分間に合う。でも俺カウンセリングなんか行かなくてもなんか変わっちまった気分だ」

 自分の部屋でベッドの上にごろりと横になりながら、ジョーイはキノのことを考える。

 女の子の前で愛想笑いすらしない自分が、自然に笑みをこぼしたことにキノの存在の意味を求めていた。

 詩織がキノの世話を焼きかわいがっていたのも、妹と重ね合わせていたに違いないと思うと、自分もキノをアスカに見立てていいように思い込んでいた。

 詩織は少し入り込みすぎて度が過ぎていたが、表に出さなかっただけでジョーイも詩織と全く同じ事をしていると認めざるを得ない。

「しかしこれでいいのだろうか」

 ジョーイの意識がぼやけていく。
 うつらうつらと睡魔がやってきてそのまま昼寝をしてしまった。
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