ロストマーブルズ

 キノの応援に応えるかのように、『カキーン』と清々しい音が青空に抜けていく。

 聡は一塁めがけて駆け出した。

 ボールはセンターを勢い良く抜けている。

 外野もボールを取りそこね、聡は一塁だけでは止まらず、二塁へ向かっているところだった。

 聡の前に出ていた選手も三塁を目指している。

 三塁側にボールが投げられたが、それはセーフとなり、そして聡も二塁に到着していた。

 ノーアウト二塁三塁で聡のチームは点を入れるチャンスとなった。

 周りの応援も力が入り、キノもまた興奮して応援していた。

 その隣で、ジョーイはキノが持ってきていたお弁当を黙々と食べている。

 不意に見たツクモと目が合い、ソーセージを一つあげようと前に出したが、ツクモは決して欲しがらなかった。

「へぇ、この犬賢いんだな」

「むやみに人から食べ物を与えられても、口にしないようにそこは訓練してあるんだ」

「盲導犬だから、色々と訓練して他にも一杯賢いことするんだろうな。ミステリアスというのか、その飼い主のキノもやっぱり不思議だよな。今日は別人に見えるよ」

「でも私達まだお互いのこと知ってないと思うよ。ジョーイも最初抱いたイメージと全然違う。だけど本当の姿って一体なんだろう。自分でも良く分かってないかもしれない」

 またキノが憂いを帯びたような目つきで寂しく語った。

 キノは何かのコンプレックスを持っているのか、自分の姿に触れられると我慢できないようだった。

 ジョーイも同じ立場でそういうところは分かっているというのに、キノが自分以上に難しく拘っているのが不思議だった。
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