ロストマーブルズ
 生徒指導室と書かれたサインがドアについている小さな部屋で、シアーズはトニーに厳しい目を向けながら注意をしていた。

「(トニー、日曜日はどこに行っていた。なぜ携帯電話に連絡をしても答えなかったんだ? お前がここに居る理由を忘れたのか)」

「(もちろん覚えてますよ。俺はジョーイの監視役。そしてシアーズ先生は俺の保護者であり、雇い主。ジョーイの側にいる条件で、俺は憧れていた日本での留学を提供された)」

「(そこまで分かっているのなら、最近の行動は何だ)」

「(俺は何も詳しい事情を知らされてない立場だ。一切それについて質問をするなと釘を刺された上で、この仕事を引き受けた。ジョーイの身の回りに変わったことはないか監視するだけの役目であり、それ以上のことは責任はないはずだ)」

「(だからといって、羽目をはずしてもいいとは言っていない。ジョーイとの関係は常に気をつけろと言ってあるだろ。土曜日はなんだか喧嘩してたように見えたが)」

「(今までずっとあいつの態度に我慢してきたんだ、時には頭に来る時だってある。それにその件についてはすでに仲直りした。それくらいやった方が却って自然じゃないか)」

 シアーズは一度ため息をついた。

「(ジョーイの身の回りで不穏な空気が流れている。そのうち学校にも入り込もうとしてくるかもしれない。何か気がついたことはないか)」

 トニーは横に首を振った。

「(そうか、だが何か気がついたことがあったらすぐに連絡して欲しい。白鷺先生に現を抜かしてばかりいるなよ)」

「(分かってるよ。だけど俺のプライベートなことには口出しはしないで欲しいもんだ)」

「(お前は立場わかって言ってるのか。お前の女好きだけは誤算だった)」
< 221 / 320 >

この作品をシェア

pagetop