ロストマーブルズ
 トニーに自分の気持ちをばらされ、ジョーイはこの先どうしていいかわからない。

 それはキノも同じなのか、ジョーイの側で息をするだけで精一杯に胸が重苦しい。

 外はすっかり暗くなっている。
 駅のホームは電灯に照らされ、線路側と明暗がくっきりと分かれていた。
 圧迫する闇に押し込められたように、体が圧縮し、息苦しい。

 ごまかしも逃げることもできずに二人は肩を並べて立っていた。

「あのさ」
「あの」

 二人は同時に喋りだし、それが余計に気まずさを増幅させる。

 お互いそちらからどうぞと言い合い、無駄な気遣いがまた神経を消耗させた。

 このままではいつまでも同じだと、ジョーイは覚悟を決めて話の主導を握った。

 ぐっと腹に力が篭る。

「トニーが言ったことだけど、俺がキノのことを気にしているというのは本当のことだ。だがその前になぜそうなったか聞いて欲しい」

 キノも緊張して「うん」と首を縦に一度振った。

「前にも話したけど、キノを見てたら昔に会った友達を思い出すんだ。ちょっと訳ありの状況でね、突然その子が俺の目の前から消えたんだ。俺はずっと気になっていたんだけど、状況が状況だけにあまり人には言えない話で一人で心の中にしまっていたんだ」

 ジョーイはここでまず一息ついた。

 キノの様子を窺ってからその先を続ける。
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