ロストマーブルズ
「シアーズ先生は俺が日本に留学できるようにしてくれた人なんだ。そしてその代わりに仕事を命じられた。それがジョーイの様子を見守ることだ」

「なるほど、それでベビーシッターか。常に俺に優しく、何でも言うことを聞いていたのも仕事だったからなのか」

「すまない。でもお前と喧嘩したとき思ったんだ。ジョーイはやっぱり親友だって。俺も過去に色々あった。親はいないし、更に学習障害で勉強ができないと思われてぐれてたんだ。そんな時シアーズが助けを差し伸べてくれた。勉強の仕方を教えてくれたり、読めないのなら、耳で覚えろって。たまたま日本のアニメ見てたら日本に興味を持って日本語を耳で何度も聞いて繰り返したんだ。そしたら不思議なほど頭によく入って覚えられたよ。そこを見込まれてここにいる訳なんだが、日本に来て本当に楽しかった。二ヶ国語話せることで自信に繋がって今では学習障害というコンプレックスも気にならなくなった」

「それで何が言いたいんだ」

「ああ、だから隠し事はしたくないってことだ。昨日の俺の行動で何かFBIに影響をもたらして、ジョーイに迷惑が掛かるのが嫌なんだ。それを説明するには俺の状況を言わなければ分かってもらえないと思ったんだ。俺はシアーズ先生よりも、ジョーイの力になりたいから。もちろん友達としてな」

 トニーがウインクして最後の言葉を強調すると、ジョーイの口許が綻んだ。
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