ロストマーブルズ
 駅で詩織と話していたとき、妙に落ち着かずおどおどしていたキノ。
 もしかしたらこの男が近くに居て逃げたかったのかも知れない。

 ジョーイはあれやこれやと推理をしてみる。
 そして目つきがきつくなり、知らずと睨みをその男にぶつけていた。

 先ほどの停車駅から数分後、電車はまた速度を落とす。
 次はジョーイの降りる駅だった。
 そしてキノと話をしていたおばあさんも降りるのか、そわそわとしだして駅が近づいている様子を窓から確認していた。

 電車が完全に停車するとドアが開き、あのストーカー男が真っ先に降りた。
 ジョーイも他の乗客に紛れて降り、それを盾にしながらストーカーの様子を探っていた。

 あいつどうする気だろう。

 ストーカーは迷わず降りたホームの反対側に向かい、電車の到着を知らせる電光掲示板で時間を確認しながら、戻りの電車を待つそぶりを見せた。

 キノが降りた駅に戻る様子だった。
 今さら後を追ったところで、キノはその間に逃げてると思うと、ジョーイはそれ以上そのストーカーに関心を持たなくなった。

 また同じようなことがあれば、今度は自分がキノに近づいて助けようという気持ちになっているのか、嘲笑う様にストーカーに一瞥を投げてから、ジョーイは改札口に繋がる階段を上っていった。

 改札口で定期を機械にかざし、通り抜けたところで、元気に『おばあちゃん』と呼ぶ男の子の声が聞こえた。

 男の子が改札口に走り寄る姿をジョーイは何気なく目で追った。

 そこにはキノと話していたおばあちゃんがいた。
 とろけそうになった笑顔を男の子に向け、改札口から出てくるところだった。
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