ロストマーブルズ
 駅を出たところで、聡の言葉を思い出す。

『キノのうち、この駅前のマンションじゃんか』

 キノは俺と同じ町に住んでいるのか、そしてこの駅の近くに彼女の住んでるマンションがあるのか。

 ジョーイは辺りをキョロキョロしだした。

 駅は南口と北口に分かれ、聡達は北口から出て行った。

 ジョーイが出てきた南口は駅から大きな歩道橋が大型ショッピングセンターに直結している。
 その下にメイン道路があり車やバスが忙しく通っている。

 さらに周りはファストフードや、色を添えるような小さな店や、雑居ビルが固まっていた。

 この南口の駅前だけは賑やかだったが、北口は全く正反対でこれといった活気はない。
 だが、図書館や市民ホールといった公共施設が集まっていた。

 駅の周りで目に入る高いビルの殆どは、マンションと言ってもいい。
 この中のどれかにキノが住んでいるに違いない。

 それを知りたいために、ジョーイは360度、体を回し、まじまじと建物を眺めていた。

 帰る駅がここなら、尚更キノが途中下車した行動がおかしかったことは決定つけられた。

 やはりストーカー説は正しいと、ジョーイはキノが取った行動に納得していた。

 あいつ大丈夫だろうか。

 無事にこの駅に戻ってこられるのか心配しながらも、ジョーイは一度駅を振り返るが、何もできないと気がつくと諦めて歩き出した。

 それでもどこか足取りは重く、このまま無事にキノが戻ってくるまで駅で待っていたい感情に襲われた。

 しかし出会ったとき偶然を装って嘘がつけそうにないと分かると、振り切るように急に小走りになった。
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