ロストマーブルズ
「どうした、目が泳いでるぞ。あの男のことで何かあったのか?」

「いや、別にないけど、なんかかっこつけて気に食わなくてさ、ほら、俺たちを意識してさ、自分も英語話せますって言う挑戦的な態度に見えたんだ」

「そういえば、なんか変に威厳があって、気取ってたように見えた」

「なっ、そうだろ」

 結局お互い聞かれたら困る共通が生まれて、その話はどちらもかき消された。

 ジョーイもトニーも隠し事をされてる確信を持ったまま、何かしっくり来ない表情で怪しげな目つきをぶつけていた。

 その時だった。
 聞きなれた町の名前が聞こえ、ブラウン管から見慣れたコンビニの映像が流れてきた。

「あっ!」

 二人とも一瞬にしてテレビ画面に体を突き出してのめりこんだ。

「…… のコンビニエンスストアで強盗未遂事件がありました」
 アナウンサーの読み上げるニュースに、二人は同時に声をあげた。

「強盗未遂事件!?」

「ニット帽を被り、マスクとサングラスで顔を覆った男がナイフを向け、店員に金を出せと脅しましたが、その時突然犬が入り込み強盗に襲い掛かかるというハプニングがありました。強盗が犬に襲われてナイフを落としたところ、コンビニの店長が機転をきかして取り押さえ、事件は未遂に終わりました。その時店内には店長ともう一人の従業員、そして客が一人いましたが怪我人はいませんでした。その様子は監視カメラに収められていました」

 テレビの画面では雑なモノクロの映像に切り替わり、レジの斜め上辺りからの角度で強盗の顔と従業員二人の頭が映し出されていた。

 強盗の手からきらりと光り、ナイフを握っているのが確認できる。
 突然のことに固まる二人の従業員。

 その時だった、横からあの盲導犬が飛び出して強盗に飛び掛った。
 強盗は押し倒される形で床に倒れたが、カウンターが邪魔になって体が隠れてしまった。
 そして犬が激しく尻尾を振って、動き回っている様子が、チラリと見え隠れしながら映っていた。
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