ロストマーブルズ
 目を閉じれば、またビー玉が転がる映像が浮かんでくる。
 コロコロと転がった先にはキノがいた。

 そのイメージを抱きながらジョーイは、すっと闇に飲まれるように眠りに陥っていた。


 静かな闇の中の眠り。
 深い眠りの中は、時の流れを忘れさせる。
 すやすやとジョーイは眠っていた。

 そして夢を見る。

 心の奥底にしまわれた過去の記憶が、英語で再生される。

「(ジョーイ、ビー玉失くしちゃった)」
「(アハハハ、それって気が狂ったっていう意味にもなるんだよ)」

「(それならほんとに狂っちゃうかも)」
「(えっ、まだ他のビー玉が箱に一杯入ってるじゃないか)」

「(でも一個足りないの)」
「(一個くらい、いいじゃないか)」

「(だけどそれが一番お気に入りだったの。だって虹色でとっても綺麗だったから)」
 目が潤んでで口元がヒクヒクしだす。

「(泣くなよ、アスカ。俺がいつか同じの買ってやるよ)」

 俯いたアスカの頭にぽんと優しく触れて、再びアスカが上を向いた時そこにはキノの顔があった。

「キノ?」
「ううん、私はアスカよ」

 夢の中でジョーイは混乱する。

 アスカの顔は完全にキノにすり替わり、アスカの面影は思い出せないくらいに消えていた。

 さらに場面は変わり、足元に沢山のビー玉が放り出され、そしてその数を言い合いする。

 ビー玉は増えたり減ったりして、その都度面白いほどに見ただけで、ビー玉の数がわかっていた。
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