ロストマーブルズ
 乗り換えの駅に着いて降りても、目はキョロキョロとキノを無意識に探していた。

 そんな時、人がひっきりなしに通る慌しい連絡通路で、後ろから自分の名前を呼ばれた。

 キノかもしれないと期待して振り返る。
 だが、それはキノではなく、代わりにグラビアの表紙を飾りそうな完璧な笑顔があった。
 詩織だった。

 またややこしいのに捕まってしまうのかと思ったが、この時、ふとキノの痴漢撃退の話が聞きたくなって、つい自分から走り寄ってしまった。

「嬉しい、私のこと覚えていてくれてた。無視されたらどうしようかと思った。今日はキノちゃんはいないの?」

「あのさ、ちょっと時間あるか?」

「えっ、それってデートのお誘い?」

「違うよ、聞きたい事があるんだ」

 ハキハキと物怖じしない詩織の態度は、正々堂々とした気持ちよさがあった。
 そして何よりあっさりとして男っぽい。

 ジョーイに出会って喜んでいたものの、明らかに黄色い声で騒ぎ出す女生徒達とは違っていた。

 二人は一度改札口を出て、駅の外に向かった。

 乗り換えする大きなターミナル駅だけあって、駅がビルとなっている。
 この辺りは町の中心部分のようにデパートや映画館など娯楽施設が集まっていた。

 詩織がスターバックスを指差し「ここでいいよね」とあっさり決めたので、ジョーイは軽く頷く。

 二人がコーヒーを手に入れテーブルにつくと、美男美女のとてもお似合いのカップルに見えるのか、店の中で注目を浴びていた。

「で、私に聞きたいことって?」

 詩織は軽くコーヒーをすすり、あくまでも自然体でジョーイと接する。
 それが話しやすい雰囲気を醸し出し、ジョーイも遠慮することなく質問をぶつけた。
< 79 / 320 >

この作品をシェア

pagetop