ロストマーブルズ
「そっか、話してくれてありがとうな」

 詩織もコーヒーを一息つくように飲んだ
 そしてここからが本題とばかりにジョーイを見つめた。

「で、なぜこの話を聞きたかったの? キノちゃんについてなんか調べているんでしょ、ねぇ、探偵さん」

「いや、そんなんじゃない」

 ジョーイは落ち着かずにコーヒーをすすった。

「フフフ、嘘をつくのがへたくそね。というより、あなたは嘘をつけない人だ」

「まだ昨日会ったばかりなのに、俺の何がわかるというんだ」

「そうね、言葉を交わしたのは昨日が初めてね、でも私はあなたのこと以前から知ってたわ。私がなぜ昨日あなたに会って喜んだと思う? ずっとあなたと話をしてみたかったのよ」

「俺を口説いたところで無駄だから」

「そんなのわかってるわよ。だから話したかった」

「はっ?」

「あなたはうちの学校の女生徒の間でも結構話題に上るのよ。それにファンクラブがあるのも知らないでしょ」

「ファンクラブ? なんだそれは?」

「よく、女の子からキャーキャー騒がれるでしょ。あれはあなたのファンクラブの人たちよ」

 ジョーイの目はまさに点になっていた。
 その表情がジョーイに似つかわしくなく滑稽で面白く、詩織はクスッと笑っていた。
 またコーヒーを飲み、落ち着いたところで話し出す。

「でもあなたは女の子に騒がれても絶対に有頂天にならない。むしろ雷を落とすように睨み付けて攻撃する。そんなことしても彼女たちには無駄だけど、私はあなたの毅然とした態度が気に入ったという訳。私があなたと話してもきっと不快感をまず表すだろうなって思うと、確かめたくってさ、だから昨日あなたがその通りにしてくれたから想像したとおりの人だって思ったの」

「俺は陰で馬鹿にされてるってことか」

「あら、違うわ。彼女たちは純粋にあなたに憧れてるだけよ。それに私はあなたのこと馬鹿になんてしていないわ。あなたが実際どういう人か知りたかっただけ。あなただって、今私にキノちゃんのこと聞いているのは彼女に興味をもったってことでしょ。直接か間接かの違いだけでなんら私と変わらないと思うんだけど」

 ジョーイは息を漏らすように「うっ」と呻き、言葉を失った。
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