笹に願いを
数時間の手術の末、臓器の一部を失ったにも関わらず、術後の経過は良好だった。
少々ヨタヨタしたものの、手術後翌日にはもう歩けたし、微熱もすぐに下がったし。
おかげで、術後10日目の朝に私は退院することができた。

予定よりも早めに退院することができたものの、仕事は2週間休んだ。
元々実働10日間分休暇を取ってたし、それを想定して、できる限りの仕事は済ませていたし。
できなくても、編集長や他のスタッフがヘルプに入ってくれるから、その点は任せて大丈夫だ。
それに、いくら術後の経過が良好だと言っても、体にメスを入れて、臓器を摘出したんだ。
体に負担がかかっていることは、まず間違いない。

雑誌「エブリクラブ」は、増刊号や年末特大号を出すといった忙しい時季でもないし、無理をしないで、休める時に休暇を取って、そんなに罪悪感を抱くことなく休むことができると思えば、今の時期に手術を受けることができて、返って良かったんだ。
となると、ガンを発見したのも、どうしようかと悩んだのも、全てがその時でちょうど良かったんだ。
何事も捉えよう次第、うん。と一人納得しながら、私はそっと微笑んだ。
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